ソーシャルレンディングで返済事故をもたらした原因

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ソーシャルレンディングの投資が日本で始まったのは2008年のことです。
ソーシャルレンディングは基本的に企業に貸付ける資金に対して出資し、融資先から支払われる利息から配当金という利益を得る投資です。

ただ、貸付というシステム上、融資先が貸付金の返済ができなくなるという事態が想定できます。

ただ、ソーシャルレンディング事業者も、融資先から支払われる利息が自社の利益になるため、返済事故が起きないよう、入念に審査しています。ところが、事業者の運営体制に問題があると、根底が覆されます。

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悪質な事業者の存在

2016年頃までのソーシャルレンディングは、業界全体の事業が順調に推移していました。ところが、2017年に入ると、ソーシャルレンディングにおける返済事故が多発するようになりました。
そして、2017年に4社の事業者が虚偽表示や投資家保護に対する違反行為などによって、金融庁から行政処分を受けました。

4社は利用者から集めた資金をいい加減に運用し、また杜撰な管理を繰返していました。その結果、多くのファンドで遅延や貸倒れなどの返済事故を発生させる事態を招きました。当然、上記4社のファンドの利用者は大きな損害を被ります。
4社の実態を見ると、適正に運営できる事業体制が構築できていない内に、利益を得ることだけを考えて事業を開始したきらいは否めません。
また、中には意図的に不適当な運営をしていたと思える事業者もありました。

返済事故をもたらした原因

返済事故が起きた原因が、4社の姿勢に起因していることは間違いがありません。ただ、ソーシャルレンディングの環境に問題があったことも事実です。
ソーシャルレンディングは金融商品取引法と貸金業法に管轄されています。
そして、貸金業法上、事業者は融資先の情報を利用者に特定されないようにしなければなりませんでした。従って、利用者は融資先の情報を得られない中でファンドを選択し、出資する状態になっていました。

逆に、事業者は融資先を匿名にできるため、利用者から出資された資金を流用できる状況にありました。
実際に、行政処分を受けた事業者は自社のグループ会社に貸付けたり、融資先の財務状況を隠蔽したりしていました。それが、融資先の返済遅延や、利用者への償還不可という事態に繋がっていました。

つまり、情報の非開示が融資先を不透明にし、利用者が安全な融資先を見分けることへの障害となっていました。
そこで、金融庁は2019年3月に、『原則として借り手の匿名化は不要』との指針を示しました。この指針を受け、各事業者は融資先企業の情報の公開を始めるようになりました。
現在は、利用者が融資先を確認した上で、投資の判断ができるようになってきています。また、情報を開示している事業者が信頼を得ることになり、利用者の増加に繋がっています。